影絵になった一群
月光を浴びて影絵になった一群が白い道を通りすぎて行くのはまことに異様でした。
野遊びでした。
三味線で娘たちを誘い出し村はずれの野原でたわむれるのです。
古い資料の中にその風俗を描いた絵もあった。
女を取りかえたりする乱交とはまるでちがうようであるが、みんながおおらかに性の解放をたのしんでいる。
いやしいかげはすこしも見いだせない。
月光にぬりつぶされた黄金のセックスです。
昔は、離島にかぎらず本土の農村でも野遊びはめずらしいことではなかった。
本土でも三味線を弾いたかどうかは知らないが、とにかくそのような風習はあった。
しかし、呼び方はいろいろで、南の島々でもそれぞれいくらかちがった言い方をしているようです。
ここ沖縄本島のまん中あたりの西海岸、東シナ海に面した恩納村一帯では毛遊びと言った。
「春遊び」と発音するのであるが、まったく言い得て妙、聞いただけで口もとがほころびる。
この恩納村の近くに、東シナ海に突き出た万座毛という岬があります。
断崖に終日波浪がたわむれる美しいところです。
じつはこの岬、以前は名前などなかったのであるが、昔琉球の王様尚敬王が見物に来て、「うーむ、絶景かな、絶景かな。
万人を座らせるに足る」ということで、万座毛と名づけられた。
そんな話があります。
ここの眺めには、万人を座して見物させるほどの値打ちがあるという意味です。
よほどお気に召したらしい。
ところでこの尚敬王です。
巡視の前にふれを出した。
「私の行く先々で毛遊びなどあってはあいならぬ。以後禁止する」野遊びを取りあげてしまった。
いち沖縄旅行者としては衝撃的な話しでした。
でも面白いですよね。